手紙には二種類ある。
その時々の感情によって書く手紙と、
実用的な手紙人がお手本を欲しがるのは後者で、
世の中にはビシネスレターや、
儀礼的な例文を紹介した本が星の数ほどあります。
でもこの一冊は前者。
といっても、いわゆる手紙のハウツー本ではなく、
20才から45才までの男女5人の、
手紙のやり取りが淡々と綴られているだけです。
でもそこには、
単純に感情をぶつけただけの手紙もあれば、
戦略的に相手の自尊心をくすぐる手紙もあり、
ユーモア、知性、教養、性格、
さまざまな個の魅力、観念、
人生の縮図,魑魅魍魎の感情が溢れています。
文末で三島由紀夫はこう語っています。
手紙を書くときには、相手はこちらに関心がない、
という前提でかきはじめなければいけません。
これが一番大切なところです。
手紙で相手の心を動かす・・・
ということにおいて、
この本の『同性への愛の告白』に
個人的に感じるところがあり、
手紙で相手を更に幻滅させるためには、
この本の『愛を裏切った男への脅迫状』が
大変に参考になります。