初めてそれらを見た少女時代、
まさに大人の世界そのものだと
感じられた。
そして今、改めてエルスケンの写真を見ると、
そこには、今の自分より明らかに若い人々が
存在しているのに、
まだ自分は到達していない気がする不思議。
世阿弥の〝 初心、忘るべからず 〟とは、
若い頃の、初々しい清らかさを忘れない。
という肯定的な意味ではなく、
『芸の未熟さ』『初心者のみっともなさ』
あの頃の恥ずかしく惨めな時代の自分を
忘れてはならないという自戒の言葉ですが、
年齢は、十分過ぎるほど大人の今だって、
未熟、自惚れ、虚勢、臆病といった、
中途半端な人生の状態と
対面することも万々あるわけで、
未だに境界線が見つからず、
大人の余裕や、自由や、寛容には程遠い。
大人の世界というのは、
優れたアーティストにしかつくれない、
“理想郷” なのかもしれず、
だからこそ、
永遠に追い続ける〝憧れ〟でもあるのだろう。